『ムーンライト』("Moonlight")

もう1週間くらい経っちゃったんですけど、なにかと話題の『ムーンライト』を4/1に観てきました。
アカデミー作品賞をとってから日本での公開が1ヶ月くらい早まり、公開する映画館もどっと増えて、やっと「普通の作品」として扱ってもらえるようになったわけですけれども。
…まぁ、日本ではウケないんじゃないでしょうかね。上映後も皆さんウーンって感じだったし。「『ラ・ラ・ランド』の方が良かった〜」なんて声もちらほら。万人受けはしなさそうだから、最初の小規模配給計画もあながち間違っていなかったような気がする。

この映画、扱っている内容が特殊というのはひとまず置いといて、構成上の特徴が2つあります。
ひとつは、一人の人間の幼少期から、思春期を経て青年期まで(ここらへんの発達心理学用語は合ってるかわからん笑)を追ったものであるということ。映画が3つのパートに分かれていて、それぞれの成長段階を描いたものになってる。
もうひとつはこれに関連してなんだけど、結構間がブツブツ切れてる。一瞬で5歳くらいから15歳くらいに飛んだり。これがこの映画の魅力のひとつでもあって、行間を読むっていう作業が必要になってくる。ぶちぎれてるものをつないでいく。その間に主人公の身に何があったのか、直接は描かれてないことを想像する。なんつーの、点と点をつないで線にする感じ?自信がない人は、これは「シャロンとケヴィンの物語」だって頭の片隅に入れながら観るとわかりやすいかも。

主人公はシャロンっていう子で、まぁ俗に言うゲイ。その子の切ない恋愛を描いたお話。だからキスシーンとかも当たり前のように出てくるわけ。なんか、男同士のキスシーンをみて、自分の中で理性と情動が戦っちゃって。ジェンダーについては一応勉強してきたはずなのに、まだ心からというか根からは偏見が取れていない自分が嫌になっちゃって。なんでだろう。今までみてこなかったものだから?そう考えると、気持ち悪いとか口外してる人は論外だと思うけど、そう思っちゃうのは仕方のないことなのかもしれない。

『ムーンライト』がアカデミー作品賞をとることができた理由は、映像美とか演技とかいった技術的に光る部分があるからっていうのももちろんあるんだけど、この時代にLGBTを扱って「普遍的な愛」を今までにないような形で描いたからっていうのも大きいと思う。僕はアカデミー賞に対してそこまで絶大な信頼を置いているわけではないけど、『キャロル』や『ミルク』といったLGBT映画の良作がアカデミー作品賞を逃してきた中、この作品がとることができたというのは映画界において大きなターニングポイントになると信じてる。

最近、大学の授業でこんな話をききまして。「1930年のアカデミー賞にて作品賞をとった『ブロードウェイ・メロディー』は、今の映画評論家からみると駄作である。しかし、この作品は世界初の全編トーキーによるミュージカル作品だったので当時の盛り上がりは大きく、時代背景を考えると受賞も納得だ。」
LGBTについては今の時代は色んな議論があって、この映画の注目度が高いこともそれを示してると思う。なんていうか思ったのは、この例のように、『ムーンライト』のようなLGBT映画が出てきてもそこまで騒がれないような時代になってほしいなって。LGBTが少数派であるのは事実だから少しも話題になることなくっていうのは無理だろうけど。

さっきこの映画は3つのパートに分かれているって書いたと思うんだけど、印象に残ったのが3つともシャロンの背中をとったシーンがあるということ。

f:id:oops_phew:20170408213934j:imagef:id:oops_phew:20170408213938j:imagef:id:oops_phew:20170408213940j:image(悲しみをたたえる背中は印象に残ります。)

3つの時期のシャロンはもちろん別の人が演じてるんだけど、演技がまたすごい。三人の自信なさげな表情、悲しそうな瞳。体が大きくなっても、演じる人が変わっても、あの小さな頃のシャロンにしか見えない。観終わってから初めて気がついたんだけど、ポスターの顔はよく見ると三人の顔を合わせたものなのね…

f:id:oops_phew:20170408214048j:image(よくみると、唇とかズレてる。)

全体的に、自分の内面に向き合う黒人を優しく包み込むような、そっと寄り添うようなソフトなタッチになっていて、ラストシーンなんかもかなりの余韻を残してくれて、非常に温かな気持ちで観ることができました。

最後に、英語がもうびっくりするほど全然聞き取れねぇ。すんごい訛っててもう必死で字幕全追い。ひどい時は一連の会話の中で文末のniggerしか聞き取れなかった。〜ニガ!みたいな。え?苦いの?つって。黒人の英語を聞きとれるようになるまではまだだいぶかかりそうです…

あ、あとアカデミー賞関連でひとつイイすか。長編アニメ賞、今年は『ズートピア』が受賞したということで、2001年からの全16回のうち12回がディズニー作品の受賞ということになりまして。それも、ディズニー作品は今年で5年連続の受賞。「ジブリ、受賞ならず!」ってマスコミが悔しそうに騒ぐのは今年で4年連続。これ、もういいでしょ。ジブリ作品が受賞しないのって、最初から分かってるから!情報量ゼロですから!!
っていうちょい文句でした。以上。

『おいしい生活』("Small Time Crooks")

ウディ・アレン。ハリウッドでウン十年もの間活躍し続ける映画監督のうちの一人。わたくし、今まで数百本映画を観てきて初めてウディ・アレン作品を鑑賞しました。なんつーか、未知との遭遇。なんで今までノータッチだったかというと、彼の作品はクセが強いらしくて、あとオトナの恋物語な感じがしてなんとなく敬遠してたから。

ウディ・アレン作品としてわりとテキトーに選んだのが、『おいしい生活』。原題の”Small Time Crooks”は、「三流の泥棒」っていう意味です。超簡単にあらすじを書くと、主人公が銀行強盗をするために近くの空き家を借りて地下にトンネルを掘ろうとするんだけど、その空き家で妻が始めたダミーのクッキー屋さんが信じられないくらい繁盛しちゃって…なんならテレビ局とか取材に来ちゃって…で、そっから大金をめぐって二転三転するコメディタッチのお話。

印象に残った特徴としては、まず、監督が主役。ほうほう。そうきたかと。イーストウッド系ね、わかった。あと、音楽がレトロな感じ。味のある雑音が入ってるやつ。それと、会話がよく練られていて、長くてリアルなんだけどそんな中にもオシャレを感じる。この3つかな。他のウディ・アレン作品が全部そうかは知りません。でも世間で言われる「アレン調」ってのがどんなもんか、雰囲気はわかった気がする。

あとね、ヒュー・グラントが出てるんですよ!好きな方は要チェック。

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(40歳くらいのヒュー・グラントさん。かっけぇ。)

実はこの映画を観て、「教養」について色々考えてしまいまして。

僕にとって一番身近な「教養」は、大学で所属している教養学部かな。「そぜくん学部どこなの?」「教養学部です」「じゃあ先生になるんだ!」「あ、教育じゃなくて教養なんです…似てるんで紛らわしいですよね笑(てかそもそもウチの教育学部は先生になる学部じゃねぇし)」みたいな会話を何度交わしたことか。あとは、クラスや部活の友達から「そぜって教養あるよね〜」ってたまに言われる。僕は映画や演劇、音楽、英語なんかが好きでそれらに関係する知識や体験が人よりちょっと多くあるかもしれないってだけなのに。そのたびに「たしかにそれも教養か、でも摑みどころねぇな」って思ってた。

おいしい生活』は、ウディ・アレンがエセ教養人についておもしろおかしく描いた映画。いきなりお金持ちになったおバカな奥様が、いきなり社交界入りしたんだけど、周りと全く話が合わないもんだから慌てて教養を身につけようとするお話。でもそれが空回りしちゃう。
ウディ・アレン社交界嫌いなのは有名で、これは彼なりの揶揄なのかなぁと。

一番印象的だったシーンが、知的な会話ができるようになろうとして辞書の単語を頭から全部覚えようとする場面。たまにいるヤバい大学受験生みたいに。語彙は文脈の中で覚えて初めてちゃんと使えるようになるものなので、これが教養につながらないっていうのは誰でもわかるから空回り具合がわかりやすくておもしろい。

んーなんか教養って、付け焼き刃のものじゃエセ文化人にしかなれないのよね。なにが滑稽にみえるのか考えると、「文化的下地のない大人が」「必要に迫られて」「特に好きでもないことについて」必死に知識と体験を詰め込もうとする、というような背伸びしている姿なのかなって思って。実は文化人になれるかどうかは生まれというか子供時代の環境で決まっちゃうんじゃないかってことまでウディ・アレンはいってるんじゃないかって感じた。

ウディ・アレンは立派な教養人なのに(調べたらすぐわかります)、こういう話を描けるのはすごいと思う。観察眼っつーのかな。正反対の立場のことなんてわからないからね普通は。彼のおバカな役の演技はとても上手で、頭の悪そうな会話を綴る脚本もお見事。

やっぱり自分の背丈に合った勉強が大事で、興味のないことだったり、好きなことでも下地がないためにレベルが自分より高すぎたりすると教養として身にはつかないのね。っていう考えてみれば当たり前のことを突きつけられたのでございました。

この映画を通して僕が教養について気づいたことなんてすごく薄っぺらくて一面的なことなんだと思う。そもそも教養の種類が今の自分が置かれている環境とは少し違うし。(社交界だと超一流の絵画、ワイン、クラシック音楽、舞台だったりする。)でもこうやってモヤモヤしていたことが言語化される体験がたまにできるから、映画鑑賞はやめられないのです。
最近は「才能」について考えあぐねているので、いい作品に出会えないかなぁ、なんて。

実際監督はここまでの皮肉をこの作品に込めたのだろうか。どうなんですか、ウディ・アレンさん。

『キングコング: 髑髏島の巨神』("Kong: Skull Island")

予告編みて、コングかっけぇな〜って思って観に行っちゃった。IMAX3D。4DXもあったんだけど、以前『ローグ・ワン』を観て4DXはまだ発展途上だなと思ったので今回は見送ることに。IMAX観たことある人はわかると思うんだけど、始まる前にクソゴツいカウントダウンがあるじゃないっすか。あれがキングコング仕様になってておじさん感動したよ。こうやって世界観つくるの大賛成。

なんかさ、キングコングってさ、たくさん映画撮られてるじゃん。ぶっちゃけ1本も観たことないわけ。でっけぇゴリラみたいなんが暴れるってことぐらいしか知らないわけ。「あ、あの隣のクラスのおっきい子でしょ?知ってる、しゃべったことないけど」くらいの感覚。これ、去年『シン・ゴジラ』観た時も思ったわ。旧ゴジラ観たことないんですけど〜つって。
でも一応キングコングを観たことないなりに、コングさんが綺麗な女の人を手で掴むか手のひらに乗せるかしてるシーンが印象的なんだけど(画像参照)、今作もちゃーんとありました。スケベコング。

f:id:oops_phew:20170326231309j:image(1933年版)

f:id:oops_phew:20170326231332g:image(1976年版)

f:id:oops_phew:20170326231349j:image(2005年版)

そういえば、今回はアンディ・サーキスは絡んでないみたいで、残念。(知らない人のために説明すると、彼はモーションキャプチャの第一人者で、3年前のゴジラやリブート版『猿の惑星』シリーズのシーザー、2005年版のキングコングなどを演じているオッサンです。)
あと、こういう怪獣モノに全然詳しくないからこの機会にちょっときいてみたいんだけど、ゴジラファンやコングファンの人たちにとって、こういうリアルな見た目を追求した感じはどうなの?やっぱ特撮?の方がいいの?どれくらい認められるの?ご意見聞かせて欲しいでっす。

もうちょっと中身をみていくと、気になったのが「いてもいなくても変わらないような、セリフも大して与えられてない中国系美女」。これね、最近のハリウッド映画によくいるのよ。なんつーの、コンビニでカップ麺買うとついてくるお箸みたいな感じ?あ、ハイハイまたか、と。色々オトナの事情があって出てきてるんでしょう。絶対死なないし。
恋愛の描写が一切なかったのは良かった。こういう映画で恋愛要素をブチ込もうとすると変になっちゃうから。確か『シン・ゴジラ』もこの点で監督がプロデューサーかなんかと揉めたとかいってたような。

さて、そうはいってもやっぱり注目はコングさんなわけです。コイツ、最高だった。めちゃくちゃデカくて、人間は圧倒的無力。これ以上の絶望もなかなかないんじゃねぇかってくらいの絶望感。コングが吠えたり唸ったりするたびに座席が音で揺れるの。ドラミングも超イケてる。そうそうワシはこういうのを待ってたんじゃよ!!ありがとう!!!って感じ。
最近リブートされた『猿の惑星』シリーズでもそうなんだけど、一応お猿さんだからさ、ゴジラと違って表情があるんだよね。感情がわかりやすいってのがコングの魅力だと思う。ゴジラと違って実際はいい奴ってのも。
じきにゴジラVS.コングみたいなアツい映画が撮られるみたいだけど、怪獣初心者の僕からすれば、口から破壊光線出せるゴジラの方が圧倒的に強い気がするのだがどうなんだろう…笑。

俳優に目を向けますと、また出てきました、サミュエル・L・ジャクソン。僕がこのブログ始めてから1ヶ月で観た9本中3本に出てきてる。かなりの打率。3割3分3厘。野球でいったら結構な好成績。
今回の彼のさすがポイントは、なんといってもコングと対等にメンチを切り合うシーン。迫力がすごい。目力ヤベェっす、この役できる人アンタしかいねぇっす、ってなったわ。

f:id:oops_phew:20170328003800j:imagef:id:oops_phew:20170326233329j:image(もはや人間界のキングコング

最後に、字幕がアンゼたかしさんだった〜。この人、僕が中3くらいの時にアポ取って取材しに行った字幕翻訳家の方で、映画観にいくとたまに大作の字幕翻訳でお名前見かけるんだよね。こうやって活躍されているのをみると、素直に嬉しいのです。

『スクリーム』("Scream")

いや〜、僕ももう大人になったもんだから、ちょっとやそっとのホラーはヘーキになっちゃって。こないだ『エクソシスト』観たけど大丈夫だった。お化け屋敷は未だにホラー映画の殺される人並みにビビりまくるんだけどね。

昨日はスクリームという超有名なホラー映画を観ました。そぜ君これ観てなかったのランキングでかなり上位に入ってきそうな本作。でも僕ホラー映画を好んで観るタイプじゃないんで…

僕にとってホラー映画といえば『呪怨』一択。今回は『スクリーム』の感想の前にちょっとこの話をします。
もう10年以上前になるのかな、僕が小学生でたしか低学年だった時の夏休みに、視聴覚室で怖い映画を観よう!みたいなイベントに参加しまして。そこで大画面で観せられたのが『呪怨』だったわけ。これがもうほんとにキョーレツで。トラウマなんてもんじゃない。僕の人格形成になんらかの影響を及ぼしたんじゃないかってくらいのインパクト。隣の女の子とか両手で顔覆ってたからね。あれは絶対小学生に観せる映画じゃないと思うわ。今さら言いますけど、算数の服部先生、『呪怨』はナシだと思いますよ!!100%チョイスミスってましたよ!!!(もうちょっと可愛い、お化けちゃん♪みたいなやつなかったんかい。)

呪怨』がひどいのは、舞台となる家の中のあらゆる場所で怖いシーンがあるってこと。トイレとか、お風呂とか、ベッドとか。こん中でどう考えても一番ヤバいのがベッド。これさ、もう反則でしょ。反則ギリギリとかじゃなくて立派な反則。幽霊が布団の中から出てきちゃうからね。ホラー映画観た後はお布団の中しか逃げ場がない人もいるだろうに。布団という聖域を侵した罪は大きい。ある意味映画史を塗り替えたと思う。

それでさ、ただでさえ怖かったのに、舞台となる家の間取りが一部自宅にそっくりだったもんだから(あの階段とか)、おうちに帰ったあともビクビクしっぱなしでね。母親に泣きついて1人でトイレに行くこともままならない。実はこのトラウマ、程度の差はあれ中学卒業するくらいまで続きました。

さてさてやっと『スクリーム』のお話。
スクリームといえば、”I scream, you scream, we all scream for ice cream.”っていう早口言葉があるね。中学生の時にscreamを辞書で調べてたら出てきて、印象的だったから覚えてる。映画とは全然関係ないけど。

作品自体は、面白いし、よくできてると思う。どんでん返しとかはないんだけど、一応殺人鬼の正体は誰だ的な要素もあって飽きさせない。あえてこの言葉を選ぶけど、「ちゃんとしてる」。内容はふざけた映画だけど、基本はしっかり抑えてるし、丁寧に作られてるなという印象。さすが語り継がれるだけある。殺人鬼がつけてるマスクも、みんな一度は見たことがあるあのマスク。

f:id:oops_phew:20170325154244j:image(ハロウィンの時によく見るあのマスク)

この映画の一番の見どころはやはりなんといっても伝説のオープニングシーン。プルプル鳴ってる家電のアップから始まり、金髪美女があんな姿になるまでの緊迫した10分間。ドリュー・バリモアの可憐さと、怖がる演技の上手さ。このシーンは死ぬまでに絶対観ておきたい。個人的にはオープニングタイトルはこのシーンの後でも良かった気がする。

f:id:oops_phew:20170325154254j:image(全力で怖がるドリュー・バリモアさん。1975年生まれらしいので、当時20歳くらい。)

ぶっちゃけ一番怖いシーンはこのオープニングだと思う。というのも、殺人鬼が弱いのがだんだんわかってくるんだよね。それがこの映画の面白いところでもあるんだけど。殺人鬼、襲おうとした女の子に逆に押し倒されちゃうんだもん。フィジカルが全然ないんだもん。筋トレ絶対してないんだもん。なんか途中から可愛く思えてきて、だんだん怖くなくなってくる。
こういうの観ると、やっぱ殺人鬼は『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターみたいなのが一番怖いなって思うよね。『スクリーム』の殺人鬼は、全然闇を抱えてないし、中身も単純で、おバカ。
あ、でも最後に正体明かしたあとのサイコな演技は結構イケてるな、って思った。
演技といえばもういっちょ、主役の女の子がタフすぎて、たまにミシェル・ロドリゲスにみえた。これはガチ。あんた元祖ロドリゲスですかい?アクション映画もイケる口かい?つって。

あとどうでもいいんだけどひとつ笑っちゃったのが、捜査の一環で電話の通話履歴を調べるシーン。履歴を調べるのに1日かかるっていう。時代を感じちゃうね。20年前はそんなんだったのかぁ。

まぁ色々書いたけどどうせ一作目が一番面白いんだろうな〜、続編は薦められない限り観ないかな。

『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』

たまに観たくなんのよ、こういうの。だってしんちゃんかわいいんだもん。だってなんだかだってだってなんだもん。
僕の友達なら余裕のよっちゃんで知っていることなんだけど、公式に発表するのは初めてかな。実は僕、クレヨンしんちゃんの大ファンなんですよ。どれくらい好きかっていうと、めちゃめちゃ落ち込んで人生に絶望した時はまずクレしんのアニメをネットで探して観るってくらい。最近テレビでやってるやつはつまんないので昔のだけ漁る。

で、以前映画にも手を出してみようと思って、ちょっと観た。オトナ帝国、戦国大合戦、B級グルメとか。ケツだけ爆弾もかな。ロボとーちゃんは映画館で。オトナ帝国とか戦国大合戦はもう子供向けアニメ映画の域を超えた出来栄えでしたね。某サイトで4.5点叩き出してるだけある。

某サイトってなんやねんと思ったそこのアナタ。ご安心ください今から説明します。てことでここでいったんクレしんの話題から離れ、僕が一番よく訪れる映画レビューサイトの紹介をぶっこんでおきましょう。いい機会なんで。「ううん、いいの、いつかは話さなきゃいけないことだったから…」っていうセリフは今みたいな時に使うんですかね(絶対違う)。
えーとそのサイトっつーのは、Yahooの映画のページ。リンクはこれ→Yahoo!映画
僕がなんでこのサイトを一番信頼しているかというと、単純に昔からずぅっと使ってきて使い慣れてるから。別にいろんなサイトと比較したっていうわけではなく、僕はこのサイト内でつけられてる点数でだいたいの作品の出来を把握できるってこと。この点数は皆さんのレビューの平均なんで、もちろんレビュー数の多寡とか、万人受けするか否かとかあるから一概にはいえないけど。こんくらいの点数がつけられてたら僕はこう判断するよーってのを書くと、

0.0~3.0 駄作
3.0~3.4 観る価値あんまない
3.4~3.6 普通にはちょっと届かないくらい
3.6~3.8 普通だとこれくらい
3.8~4.1 良作の域
4.1~4.3 なかなか生まれない かなりレベル高い
4.3~4.5 ここらへんになってくると誰もが認める名作
4.5~5.0 傑作!

細かっ!と思うかもしれないけど僕の感覚的にはこんな感じ。

今回ヘンダーランドを選んだのも、このサイトでの評価が高かったから。それと、ネットで調べてたら「やっぱりこの作品が原点だ」って言ってる人が多かったから。あ、そろそろちゃんとクレしんの話に戻らなければ。この作品は、ヘンダーランドっていう遊園地で起こるドタバタ劇のお話。このヘンダーランドが群馬県にある設定なんだけど、え、なに?群馬県って20年前からやべぇとこっていうイメージあったの?この頃からグンマー帝国の概念が!?って思っちゃったよね。多分偶然だけどね。

観てて気になったのが、「スゲーナ・スゴイデスのトランプ」のチートっぷりね。これ、持ちながら「スゲーナ・スゴイデス」って唱えるとあらゆる魔法が使えるという最強アイテム。ちゃんと使えば敵を一瞬で倒せるはずなのに、使うのがしんのすけだから(理由は忘れたけどなぜかしんのすけにしか使えない設定になってる)、だいたいいつもアクション仮面、カンタムロボ、ぶりぶりざえもんを召喚してしまう。最強の兵器をアホが使うことでちゃーんとバランスがとれてるっつーね。
あと雛形あきこの扱いがおもしろすぎる。一応本人役でゲスト出演っていう形のはずなのに、しんのすけがスゲーナ・スゴイデスのトランプで無駄に召喚する時しか出番がない(笑)。

お話的にも、よくよく考えたらすっげーしょーもない設定で、は?ってなりそうなキャラクターや世界観を丁寧に描いているので普通に入り込めるし面白い。コメディーもアクションもちゃんとしてるし、ラスト30分からの話の加速、盛り上げ方も上手いな〜って思った。ヒーローが悪を倒すアドベンチャーをつくるなら基本はこうだろうなということをきちんとやってるから、安定感がある。
そして語り継がれる名シーンが二つ。ババ抜きの場面と、追いかけっこの場面。この二つはほんとに完成度が高い。

f:id:oops_phew:20170326154354j:image(ババ抜き中のひろし)

 最後に、追いかけっこのシーンは階段を駆け上がる感じなんだけど、どことなくオトナ帝国のラストの階段シーンやルパンのカリオストロの城の追いかけっこシーンに似ている気がする。特にカリオストロは城が崩れてラストに海が強調されるところまで一緒。まぁこれくらいだと特にオマージュとは言えないかもしれないけど、多分偶然なんだけど、映画を無駄にいっぱい観てるとそういうことに無駄に気づいちゃったりするんだよね。おわり。

『閉ざされた森』("Basic")

原題のBasic、どういう意味かなって思って観てたら、”Murder is Basic.”っていうセリフがあったんで普通に「本能」って意味だった。なんか、このタイトル微妙な気がするわ〜もうちょっとなんかあったと思う、ほんとに。邦題の方が映画の内容に合ってる。

内容としては、森の中で特殊訓練をしていた7人のレンジャー隊員のうち4人が行方不明になり、1人が死亡したんで残りの生き残り2人に尋問することになるんだけど証言が食い違いまくって結局真実は何やねんってなるお話。最後の方で真実が浮かび上がっては二転三転するっていうのが最大の見ドコロ。この映画、どんでん返し系って知らずに観た。おいおい、それも二転三転しちゃうパターンかよ。これでもかってくらい転がしてくる、返してくる。正直やりすぎじゃないの?って思っちゃったよ。息をつく暇くらい与えてくれよ。アンタ何回返した?3回?いや下手したら4回いってるべ?つって。これがちゃぶ台返しなら、まあまあいい記録だろうよ。

最後にひっくり返してくれるのはいいんだよ。それだけでミステリーは無条件に楽しめるんだよ。だけどね、この作品に関していうと、ちょっとお粗末。まず、人が多すぎ。暗い森に登場する7人全員の顔と名前を話の序盤で一致させなきゃすぐ話についていけなくなる。これから新歓シーズンを迎えて新入生を必死に覚えなきゃいけなくなる大学生にとっては格好の練習材料であることは間違いないけどね。特にそういうトレーニングをする必要のない人にとってはただただしんどい。森が暗いから顔が見にくいしね。覚えてもらいたいならもうちょいちゃんとツラ見せろや、つってね。しかも話が1回の鑑賞で理解するには話が複雑すぎてついていくのが難しいんで、どんでん返しに「してやられた感」があんまない。気持ちいいのはそうなんだけど、人によってはあんまりスッキリしないかも。つくられ方も、観客を騙すことだけを目的にしてる感じがする。

でもね、この作品、監督がジョン・マクティアナンって人なんだけど、実はこの人ミステリーを撮るのこれが初めてなんだそう。それまでは『プレデター』や『ダイ・ハード』といったアクション映画ばっか撮ってた人ってことを考えると上出来。今までライト守ってた子が急にピッチャーやってみたって感じだね。「お前意外と上手いじゃん!」「え、そうすか、あざっす」みたいなね。

ここでちょっとひとつすごく印象に残ったシーンについて書いてもいいっすか。いいよね、僕のブログなんだもん。えっと、ネタバレになるんで詳しいことは言えないんだけど、ある二人が「あれお前がやったんだろ」「んなわけwww」みたいな応酬をする場面があるんすよ。ここでミソなのがその二人が、片方はやったことがバレているのをわかった上で、もう片方はバレているのを相手が知っているのをわかった上で繰り広げている茶番であるということ(ややこしい)。なんか、愛想よく笑いながら互いの心の内を探り合っているんだけど、たまに真剣になった瞬間の口とか目がどアップでうつされて、緊迫感のあるいいシーンになってた。

あと、俳優に目を向けると、ごっつい二人が出演してます。ジョン・トラボルタサミュエル・L・ジャクソン。二人とも演技がスーパーお上手。超有名なので知らない人は調べてみてください。特にサミュエル・L・ジャクソンは絶対どっかで見たことあっから。

f:id:oops_phew:20170326155152j:image(このオッサン)

というわけで、まあまあなどんでん返しモノでした。

『恋はデジャ・ブ』("Groundhog Day")

以前TSUTAYAに行った時にだいぶ強調されて置いてあって、ずっと気になってたやつ。日本人にとってはおそらく意味不明な原題に、うまい具合の邦題をつけられたパターンな気がする。

邦題からなんとな〜く匂ってくるよね、作品の雰囲気が。ハハーン、なんかよくわかんないけど繰り返すんだろうな〜、恋がデジャ・ブしちゃうんだろうな〜みたいな。 実際その通りで、あるオッサンが同じ1日を半永久的に繰り返すお話。毎日が2月2日。朝6時にリセット。同じ日だから起こる出来事は毎日全く同じで、タイミングも位置も、そのオッサンがいじらない限り1ミリもズレない。ズレるわけがない。

んーなんか、時間のループが繰り返すのって見覚えがある…それこそデジャ・ブだ…とか思ってたら心当たりが。『ミッション: 8ミニッツ』と最近観た『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』。他にもいっぱいありそう。調べてみると、前者は2011年の映画で後者は2016年の映画。でもってこの作品は1993年の映画。年季の入り方が違う。もう世紀からして違ってっから。こっちは20世紀の作品ですから!古いんです!あなたとは違うんです!(←ネタも古い)つって。 そしてこれは特に調べずに判断したことなんだけど、時間のループネタ、映画の世界に1993年時点ではないようであったかあるようでなかったかでいうと、あるようでなかった方だとおもう。

それにしてもこれ相当キツいよね。こんだけ毎日同じだったらノイローゼになるっつーの。毎朝6時には絶対ベッドの上にいることになってるもんだから主人公のオッサンも完全に頭おかしくなって、しまいには自殺とかし始めちゃうから。笑えねぇ。ついでにこのオッサンってのが『ゴーストバスターズ』でゴーストをバスターしてた俳優さんで、傍から見てるこっちとしては、まーた科学的には説明できないことに巻き込まれちゃったのかー、って感じ。

邦題に「恋」とか一丁前についてることからもわかるように、そりゃーもうわりとガッツリ恋のお話で、ちゃんと美人のヒロインもそれなりの存在感で出てくるわけ。これがただの時間のループに味付けをしていて、このヒロインをどうゲットするか、オッサンが毎日(といってもエブリデイ2月2日なのだけど)試行錯誤していくのが面白い。 面白いのもそうなんだけど、なんならちょっとコメディなんだけど、なんかちょっと哲学的でもある。そこらへんの難しい話は有名な映画評論家の町山智浩さんがお得意で、彼によるとこの映画はニーチェの「永劫回帰」っていう思想をたった2時間の映像で表現することに成功しているらしい。なるほどね。エーゴーカイキって、高校の授業でやったから知ってる。

(びじんさん)

そんな、ふざけた邦題からは想像できないくらい素敵でちょっと深めな作品となっております。

印象に残ったセリフは、主人公がヒロインに「最近同じ日が繰り返して困ってるんだよねー」って言った後に彼女が言ったヒトコト。

"Okay, I'm waiting for the punch line."(で、オチは?)

信じられないバカげた話を聞いた時に使えるのかも?