『おいしい生活』(Small Time Crooks)

ウディ・アレン。ハリウッドでウン十年もの間活躍し続ける映画監督のうちの一人。わたくし、今まで数百本映画を観てきて初めてウディ・アレン作品を鑑賞しました。なんつーか、未知との遭遇。なんで今までノータッチだったかというと、彼の作品はクセが強いらしくて、あとオトナの恋物語な感じがしてなんとなく敬遠してたから。

ウディ・アレン作品としてわりとテキトーに選んだのが、『おいしい生活』。原題の”Small Time Crooks”は、「三流の泥棒」っていう意味です。超簡単にあらすじを書くと、主人公が銀行強盗をするために近くの空き家を借りて地下にトンネルを掘ろうとするんだけど、その空き家で妻が始めたダミーのクッキー屋さんが信じられないくらい繁盛しちゃって…なんならテレビ局とか取材に来ちゃって…で、そっから大金をめぐって二転三転するコメディタッチのお話。

印象に残った特徴としては、まず、監督が主役。ほうほう。そうきたかと。イーストウッド系ね、わかった。あと、音楽がレトロな感じ。味のある雑音が入ってるやつ。それと、会話がよく練られていて、長くてリアルなんだけどそんな中にもオシャレを感じる。この3つかな。他のウディ・アレン作品が全部そうかは知りません。でも世間で言われる「アレン調」ってのがどんなもんか、雰囲気はわかった気がする。

あとね、ヒュー・グラントが出てるんですよ!好きな方は要チェック。

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(40歳くらいのヒュー・グラントさん。かっけぇ。)

実はこの映画を観て、「教養」について色々考えてしまいまして。

僕にとって一番身近な「教養」は、大学で所属している教養学部かな。「そぜくん学部どこなの?」「教養学部です」「じゃあ先生になるんだ!」「あ、教育じゃなくて教養なんです…似てるんで紛らわしいですよね笑(てかそもそもウチの教育学部は先生になる学部じゃねぇし)」みたいな会話を何度交わしたことか。あとは、クラスや部活の友達から「そぜって教養あるよね〜」ってたまに言われる。僕は映画や演劇、音楽、英語なんかが好きでそれらに関係する知識や体験が人よりちょっと多くあるかもしれないってだけなのに。そのたびに「たしかにそれも教養か、でも摑みどころねぇな」って思ってた。

おいしい生活』は、ウディ・アレンがエセ教養人についておもしろおかしく描いた映画。いきなりお金持ちになったおバカな奥様が、いきなり社交界入りしたんだけど、周りと全く話が合わないもんだから慌てて教養を身につけようとするお話。でもそれが空回りしちゃう。
ウディ・アレンが社交界嫌いなのは有名で、これは彼なりの揶揄なのかなぁと。

一番印象的だったシーンが、知的な会話ができるようになろうとして辞書の単語を頭から全部覚えようとする場面。たまにいるヤバい大学受験生みたいに。語彙は文脈の中で覚えて初めてちゃんと使えるようになるものなので、これが教養につながらないっていうのは誰でもわかるから空回り具合がわかりやすくておもしろい。

んーなんか教養って、付け焼き刃のものじゃエセ文化人にしかなれないのよね。なにが滑稽にみえるのか考えると、「文化的下地のない大人が」「必要に迫られて」「特に好きでもないことについて」必死に知識と体験を詰め込もうとする、というような背伸びしている姿なのかなって思って。実は文化人になれるかどうかは生まれというか子供時代の環境で決まっちゃうんじゃないかってことまでウディ・アレンはいってるんじゃないかって感じた。

ウディ・アレンは立派な教養人なのに(調べたらすぐわかります)、こういう話を描けるのはすごいと思う。観察眼っつーのかな。正反対の立場のことなんてわからないからね普通は。彼のおバカな役の演技はとても上手で、頭の悪そうな会話を綴る脚本もお見事。

やっぱり自分の背丈に合った勉強が大事で、興味のないことだったり、好きなことでも下地がないためにレベルが自分より高すぎたりすると教養として身にはつかないのね。っていう考えてみれば当たり前のことを突きつけられたのでございました。

この映画を通して僕が教養について気づいたことなんてすごく薄っぺらくて一面的なことなんだと思う。そもそも教養の種類が今の自分が置かれている環境とは少し違うし。(社交界だと超一流の絵画、ワイン、クラシック音楽、舞台だったりする。)でもこうやってモヤモヤしていたことが言語化される体験がたまにできるから、映画鑑賞はやめられないのです。
最近は「才能」について考えあぐねているので、いい作品に出会えないかなぁ、なんて。

実際監督はここまでの皮肉をこの作品に込めたのだろうか。どうなんですか、ウディ・アレンさん。