読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『ムーンライト』(Moonlight)

もう1週間くらい経っちゃったんですけど、なにかと話題の『ムーンライト』を4/1に観てきました。
アカデミー作品賞をとってから日本での公開が1ヶ月くらい早まり、公開する映画館もどっと増えて、やっと「普通の作品」として扱ってもらえるようになったわけですけれども。
…まぁ、日本ではウケないんじゃないでしょうかね。上映後も皆さんウーンって感じだったし。「『ラ・ラ・ランド』の方が良かった〜」なんて声もちらほら。万人受けはしなさそうだから、最初の小規模配給計画もあながち間違っていなかったような気がする。

この映画、扱っている内容が特殊というのはひとまず置いといて、構成上の特徴が2つあります。
ひとつは、一人の人間の幼少期から、思春期を経て青年期まで(ここらへんの発達心理学用語は合ってるかわからん笑)を追ったものであるということ。映画が3つのパートに分かれていて、それぞれの成長段階を描いたものになってる。
もうひとつはこれに関連してなんだけど、結構間がブツブツ切れてる。一瞬で5歳くらいから15歳くらいに飛んだり。これがこの映画の魅力のひとつでもあって、行間を読むっていう作業が必要になってくる。ぶちぎれてるものをつないでいく。その間に主人公の身に何があったのか、直接は描かれてないことを想像する。なんつーの、点と点をつないで線にする感じ?自信がない人は、これは「シャロンとケヴィンの物語」だって頭の片隅に入れながら観るとわかりやすいかも。

主人公はシャロンっていう子で、まぁ俗に言うゲイ。その子の切ない恋愛を描いたお話。だからキスシーンとかも当たり前のように出てくるわけ。なんか、男同士のキスシーンをみて、自分の中で理性と情動が戦っちゃって。ジェンダーについては一応勉強してきたはずなのに、まだ心からというか根からは偏見が取れていない自分が嫌になっちゃって。なんでだろう。今までみてこなかったものだから?そう考えると、気持ち悪いとか口外してる人は論外だと思うけど、そう思っちゃうのは仕方のないことなのかもしれない。

『ムーンライト』がアカデミー作品賞をとることができた理由は、映像美とか演技とかいった技術的に光る部分があるからっていうのももちろんあるんだけど、この時代にLGBTを扱って「普遍的な愛」を今までにないような形で描いたからっていうのも大きいと思う。僕はアカデミー賞に対してそこまで絶大な信頼を置いているわけではないけど、『キャロル』や『ミルク』といったLGBT映画の良作がアカデミー作品賞を逃してきた中、この作品がとることができたというのは映画界において大きなターニングポイントになると信じてる。

最近、大学の授業でこんな話をききまして。「1930年のアカデミー賞にて作品賞をとった『ブロードウェイ・メロディー』は、今の映画評論家からみると駄作である。しかし、この作品は世界初の全編トーキーによるミュージカル作品だったので当時の盛り上がりは大きく、時代背景を考えると受賞も納得だ。」
LGBTについては今の時代は色んな議論があって、この映画の注目度が高いこともそれを示してると思う。なんていうか思ったのは、この例のように、『ムーンライト』のようなLGBT映画が出てきてもそこまで騒がれないような時代になってほしいなって。LGBTが少数派であるのは事実だから少しも話題になることなくっていうのは無理だろうけど。

さっきこの映画は3つのパートに分かれているって書いたと思うんだけど、印象に残ったのが3つともシャロンの背中をとったシーンがあるということ。

f:id:oops_phew:20170408213934j:imagef:id:oops_phew:20170408213938j:imagef:id:oops_phew:20170408213940j:image(悲しみをたたえる背中は印象に残ります。)

3つの時期のシャロンはもちろん別の人が演じてるんだけど、演技がまたすごい。三人の自信なさげな表情、悲しそうな瞳。体が大きくなっても、演じる人が変わっても、あの小さな頃のシャロンにしか見えない。観終わってから初めて気がついたんだけど、ポスターの顔はよく見ると三人の顔を合わせたものなのね…

f:id:oops_phew:20170408214048j:image(よくみると、唇とかズレてる。)

全体的に、自分の内面に向き合う黒人を優しく包み込むような、そっと寄り添うようなソフトなタッチになっていて、ラストシーンなんかもかなりの余韻を残してくれて、非常に温かな気持ちで観ることができました。

最後に、英語がもうびっくりするほど全然聞き取れねぇ。すんごい訛っててもう必死で字幕全追い。ひどい時は一連の会話の中で文末のniggerしか聞き取れなかった。〜ニガ!みたいな。え?苦いの?つって。黒人の英語を聞きとれるようになるまではまだだいぶかかりそうです…

あ、あとアカデミー賞関連でひとつイイすか。長編アニメ賞、今年は『ズートピア』が受賞したということで、2001年からの全16回のうち12回がディズニー作品の受賞ということになりまして。それも、ディズニー作品は今年で5年連続の受賞。「ジブリ、受賞ならず!」ってマスコミが悔しそうに騒ぐのは今年で4年連続。これ、もういいでしょ。ジブリ作品が受賞しないのって、最初から分かってるから!情報量ゼロですから!!
っていうちょい文句でした。以上。