『ゲット・アウト』("Get Out")

「全米初登場No.1大ヒット!」「米映画レビューサイト99%大絶賛!」みたいな宣伝文句を提げて日本に上陸した本作。アクション大作ならともかく、ホラーだっていうんだから、観に行きたくなっちゃう。僕のホラー映画に関する見解は『スクリーム』について書いた記事で少し語られているので、そちらもぜひ。

『ゲット・アウト』。日本の配給会社お得意のサブタイトルがついていないから、なにからゲット・アウトするのかもわからず。今上映されてる”IT"なんかは、『IT イット "それ"が見えたら、終わり。』というなんともまぁ親切なサブタイトルがつけられていて、「ITって、見えたら終わるヤバいやつなのか〜」ってバカでもわかるようになってるけどね。僕はダサいと思うからこれはちょっといただけないけどね。

観に行く前に仕入れた情報は黒人のビビリ顔だけだったけど、これが大正解。これから観る人は予告編はみない方がいいよ、ネタバレの宝庫なので。

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(このキャンペーンで友達と散々遊んでから行きました〜笑)

ホラーだと思って多少身構えてたんだけど、そこまででもなかったです。去年の冬にみた『ドント・ブリーズ』が異次元の怖さだったから、それに比べると全然。人間以外の得体の知れない生命体も登場しないので、わりとホラー初心者でもイケるのでは?と思いました。

このブログでは、未見の人向けに基本的にはネタバレなしで書くことをモットーにしているので、今回も頑張ってネタバレなしで書いていきたいと思います。無理だったら途中で方向転換します(ちなみに『オールド・ボーイ』では成功しましたが『メッセージ』では一言も書けなかったので諦めてネタバレ全開で書きました)。

キョーレツに印象に残るのは、黒人のメイドさんの顔だよね。怖い。顔が、怖い。泣きながら笑うこの演技、アッパレ(ちなみにこの笑顔+涙の意味が、物語の一番コアな部分の理解に密接にかかわってきます)。

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(夢に出てきそう…) 

こんなこと言っちゃ失礼なんだけどさ、ホラー映画に「素で顔が怖い人」が出てきて、ホラー要素関係ないところもちゃんと怖い、っていうの、反則じゃない?僕が知ってる中でこれが一番顕著なのが、『シャイニング』なんだけど。

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(見てくださいこの顔!めちゃくちゃこえぇよ!!)

伏線が、すごいんですよね、この映画。ここまで伏線を張り巡らせている映画、久しぶりに観ましたわ。詳しくは書きませんが、登場人物の態度、表情、視線、言葉の細かなひとつひとつがちゃんと意味を持っています。事の真相を知ると、全てが違ってみえてくる快感。「あ、あぁ〜はいはいはい!!!」って感じ。これはほんとに久しぶり。

基本的には、黒人と白人をテーマにした作品だと思っていただいて構わないです。そのような観点でみると、細かなメタファーがたくさん観測できます。
例えば、綿とスプーンとか(作品のどっかにでてきます)。綿は、綿花栽培で酷使された黒人の歴史を表しています。一方スプーンは裕福な上流階級の象徴でしょう。俗に言う、born with a silver spoon in one’s mouthっていうやつです。
あと僕が気づいたのは、作品の中で印象的なスマホでの撮影場面。これは、白人警官による暴力がスマホのカメラで告発されたエリック・ガーナー窒息死事件を意識していると思われます(この事件に限らず最近は動画撮影で告発される同様の事件が多い)。
僕が気づいてないだけでたぶん他にもいろいろメタファーがあると思います。それを探してみるのもまた一興かも。

オチの衝撃度としては、そこそこといった感じ。ガツンとくる系ではなくて、ジワジワわかってくる感じ。欲をいえば、最後にもう一捻りどんでん返しがほしかった笑
あと、こういう作品こそ、メイキングがみたくなるね。ちなみに僕は『エクソシスト』の恐怖を、メイキングの皆がじゃれあっている映像をみて克服しました。

そしてそして。この映画、社会を風刺した作品なので、映画賞レースではコメディ映画として分類されることもあるそうですが、それに対して監督がひとこと。ドキュメンタリーだそうです。

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Twitterより。)

あー、ネタバレせずに書けた。「差別」に対する自分の思い込みを、最高の切れ味で裏切ってくる作品です。あとは、「娘さんを僕にください!」の最悪の結果バージョンです。気になる方はぜひご観賞を〜。