『グレイテスト・ショーマン』("The Greatest Showman")

ラ・ラ・ランド』が世間を賑わせてから約1年。どうやら、同じ製作チームが音楽を手掛けたミュージカル映画が公開されるらしい。
どれどれ、予告編チェックしてみるか→え、なんか話クサそう→とりあえず放置、ってな感じで全然観る予定はなかったんだけど、めっちゃ誘われたので観てきました。『グレイテスト・ショーマン』。
結果、観てよかったです。”This Is Me”という最高の曲に出会えたから。
曲はやはり素晴らしかった。ですがお察しの通り、ストーリー展開はいたって普通でショーマンも別にグレイテストではありませんでした。そもそもバーナムの話を美談として描くことに無理がある。実際はこんなに高度な歌とダンスはなくて、ほんとに見世物だっただろうからね。

ストーリーは実話ベースです。ひとことで言うと、P・T・バーナムというオッサンが「個性的な仲間」(フリークス)を集めてショーをつくり、成功していくというお話。普段世間から隠れるようにして暮らしているその人たちにサーカスで活躍してもらおうという計画。基本的には事業主のお金儲けのために。扱うテーマがすごくデリケート。

1932年にアメリカで製作された『フリークス』っていう映画を思い出しました。観たことはないですけどね。映画オタクは頭でっかちなんです。知識に経験が追いつかない。
『フリークス』がP・T・バーナムと関係があるのかどうかは知りませんが、この映画は本当に見世物小屋に出ていた奇形の人たちに出演してもらったこと、内容が過激だったことなどから各地で上映禁止となり、「アメリカ映画史上屈指のショッキングな作品」と言われています。

僕がこの映画で一番気になったのは、このような題材を扱っておきながらフリークス側の視点の掘り下げが欠けている点。ミュージカル映画だから、ストーリーに深みをつけられないしMVみたいになるのは仕方ないけど、ここまでされると雑な感じが否めない。
フリークスの中にはバーナムのショーに出ることで今までとは違った窮屈を感じていた人もいるかもしれないし、フリークスをショーに出すことの是非にも少し触れてもよかったかもしれない。

そして、バーナムについて。彼が夢想家でリスク管理のできないバカであることは置いておくとして、ちょっとなーって思ったことがあって。
最後に財産をすべて失ったあと残されたフリークスに元気づけられて、仲間の大切さやサーカスの存在意義に気づいたバーナムさんだけど、彼が気づくべきだったものはもうひとつあると思う。それは、「上流階級ウケするジェニーの歌と、フリークスのパフォーマンスには本質的には差がない」ということ。ジェニーの歌声を武器に世界ツアーに出るバーナムだけど、その際にフリークスたちをアメリカに置いていくんだよね。ジェニーとたまたま上手くいかなかったからいいけど、そうでなかったらどうなっていたかと思うとゾッとする。自分本意すぎる。たぶん、物語を通して彼はあまり成長できてないんじゃないかなって思った。

ってここまで文句っぽいことをだらだら書いたけど、楽曲とダンスに関してはすごくよかったです(製作陣はストーリーではなくこっちに全てをかけたはず)。
少なくとも日本では『ラ・ラ・ランド』とよく比較されるけど、楽曲を比べると僕は『ラ・ラ・ランド』の方が好きだった。でもツレはこっちの方が好きだと言っていたので個人の好みだと思う。
ラ・ラ・ランド』は曲のバックがオケだったのに対して、こっちはバックがバンドだからズンチャカ系です。あ、あと、こっちは『ラ・ラ・ランド』とは違ってたぶん音楽が全シーン別撮りで、人工的な感じがした。まぁ重低音とか好きな人にはオススメ。ダンスにもよく合う。それを生かしたシーンがとても多くて、得にバーテンダーのシーンは素晴らしかったなぁ。

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(後ろにいるバーテンも、ダンスキレッキレ。)

そして最後に、特筆すべきは”This Is Me”のシーン。この映画の魅力はここに詰まっているといっても過言ではない。曲のメロディー、メッセージの普遍性、リズム、歌詞の単語のチョイス、語るような静かな入りから盛り上がるラストまでの歌われ方など、すべてがシンプルかつ力強い。こんなに心にズシンとくる曲には久しぶりに出会った。
映像も、フリークスが文字通り上流階級の社交パーティーの場に「突っ込んでいく」様子が描写されている。ここまでアイコニックでシンボリックな場面が今までの映画にあっただろうかって思っちゃうくらい、パワフルです。YouTubeに映像あったので、載っけときます。

The Greatest Showman - This Is Me [Official Lyric Video] - YouTube

この映画について全体的に言うと、これをするならP.T.バーナムでやってほしくなかったし、バーナムでやるならミュージカルじゃなくてもいいからストーリーを深めてほしかった。

え、ザック・エフロンはって?あー、カッコよかったよ。うん。以上!

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』("IT")

お久しぶりです。今年も早いものでもう大晦日ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
わたくし、今年はドラマと読書に時間を費やしまして、映画は50本くらいしか観ることができませんでした。
今年最後の記事は、最近観た10本くらいの中で僕が一番気に入った”IT”について書いていこうと思います。めちゃめちゃよかった。映画館で同じ作品を2回観ることはあんまりないんですけど、これは観ましたね。

『IT』の原作者といえばかの有名なスティーブン・キング。彼の小説はたくさん映画化されていて、『キャリー』、『シャイニング』、『ミザリー』、『グリーンマイル』、『スタンド・バイ・ミー』、『ショーシャンクの空に』などなど、挙げていったらキリがないです。
『IT』は1990年に一回テレビシリーズの映画として製作されています。主演はティム・カリー。これでピエロ恐怖症になった人も結構いるとか。

1990年版のは観たことないんだけど、2017年版のは「つかみ」がよかった。ペニーワイズ(←IT、ピエロの名前)が出てきてないのに画面から漂う緊張感。スクリーン裂けるんちゃうかってくらい。からのタイトルね。あのタイトルの出し方。カメラワーク。文字のデザイン。音の使い方。もう最高。オープニングの5分くらいでかなり惹きつけられた。

まず書くべきなのはペニーワイズについてかしら。これね、はっきりいって怖くはなかった。なんていうんだろう、ペニーワイズって設定上人間じゃないからこれでいいんだろうけど、リアリティがないんだよね。とてもCGっぽい。その点1990年版のはティム・カリーがメイクをしただけだったから、マジの狂ったピエロ感が出ていて怖かった。原作読んだことないからわからんけど、原作によせた方が怖くないっていう皮肉な感じになってる気もする。。。
今回のペニーワイズは『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーに似てたなぁ。声とか口周りのよだれとか、目つきとか。ちゃんと狂っていて、観ていて安心できた。
そういえば、ピエロがこういう風にホラー要素扱いされるようになったのはいつからなんだろう。殺人ピエロ、ジョン・ウェイン・ゲイシーから?それとも、人間の根源的な性質のせい?調べてみるとおもしろそう。

でも、僕が好きだったのはペニーワイズなんかじゃなくて、子供たち。ホラー映画でありながら(そんな怖くないけど)、甘酸っぱい青春物語でもあるんです。かわいい思春期の子供達の成長譚でもあるんですよ皆さん!!
子供たちがITとたたかうお話なんだけど、ITが子供たちひとりひとりの怖がるものに姿を変えて現れるわけ。だから、そのたたかいの中で自分の恐怖心とか弱さと真正面から対峙して、克服していかなきゃいけない。その恐怖も大人社会の闇がもたらすものばかりで、思春期に克服しなければ前に進めないものでもある。
団体でひとつになってたたかうから、一体感とか、団結感とかもあってすごく心が揺さぶられる。しかも学校ではイケてない子たちの集まりで、自分たちのことを「ルーザーズ・クラブ」って呼んでたりするところとかもイイ。素直に応援したくなる。ITとのたたかいを通して、子供たちの自主性、主体性が育まれていく姿は必見。あと初恋とかもあったりしてね!!!!!キャー!!!!!!//////
子供達にとっては、ひと夏の思い出としても、大人になるきっかけとしても、大事な意味を持つ体験になったんだと思う。

f:id:oops_phew:20171231144917j:imagef:id:oops_phew:20171231144928j:imagef:id:oops_phew:20171231145032p:image(こんな感じ。7人です。)

子供たち、みんなかわいいんだけど、1人これは、って子がいて。紅一点、ベヴァリー役のソフィア・リリス。この子すごい好きだ。エイミー・アダムスとかエリザベス・オルセンに似てる。芯のある演技もするし、これから注目の女優さんだと思う。

f:id:oops_phew:20171231145122j:image(この子や〜!心を奪われた…)

今作は子供編だったけど、みんなが成長した後の大人編も原作にはあって、それも今度映画化されるみたいだね。今作は子供ならではの良さみたいなのがあったと思うけど、大人編はどうなるんだろう。今作みたいなどこか懐かしくて瑞々しい、青春物語風の雰囲気からどう変わるんだろう。今から楽しみです。

『ゲット・アウト』("Get Out")

「全米初登場No.1大ヒット!」「米映画レビューサイト99%大絶賛!」みたいな宣伝文句を提げて日本に上陸した本作。アクション大作ならともかく、ホラーだっていうんだから、観に行きたくなっちゃう。僕のホラー映画に関する見解は『スクリーム』について書いた記事で少し語られているので、そちらもぜひ。

『ゲット・アウト』。日本の配給会社お得意のサブタイトルがついていないから、なにからゲット・アウトするのかもわからず。今上映されてる”IT"なんかは、『IT イット "それ"が見えたら、終わり。』というなんともまぁ親切なサブタイトルがつけられていて、「ITって、見えたら終わるヤバいやつなのか〜」ってバカでもわかるようになってるけどね。僕はダサいと思うからこれはちょっといただけないけどね。

観に行く前に仕入れた情報は黒人のビビリ顔だけだったけど、これが大正解。これから観る人は予告編はみない方がいいよ、ネタバレの宝庫なので。

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(このキャンペーンで友達と散々遊んでから行きました〜笑)

ホラーだと思って多少身構えてたんだけど、そこまででもなかったです。去年の冬にみた『ドント・ブリーズ』が異次元の怖さだったから、それに比べると全然。人間以外の得体の知れない生命体も登場しないので、わりとホラー初心者でもイケるのでは?と思いました。

このブログでは、未見の人向けに基本的にはネタバレなしで書くことをモットーにしているので、今回も頑張ってネタバレなしで書いていきたいと思います。無理だったら途中で方向転換します(ちなみに『オールド・ボーイ』では成功しましたが『メッセージ』では一言も書けなかったので諦めてネタバレ全開で書きました)。

キョーレツに印象に残るのは、黒人のメイドさんの顔だよね。怖い。顔が、怖い。泣きながら笑うこの演技、アッパレ(ちなみにこの笑顔+涙の意味が、物語の一番コアな部分の理解に密接にかかわってきます)。

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(夢に出てきそう…) 

こんなこと言っちゃ失礼なんだけどさ、ホラー映画に「素で顔が怖い人」が出てきて、ホラー要素関係ないところもちゃんと怖い、っていうの、反則じゃない?僕が知ってる中でこれが一番顕著なのが、『シャイニング』なんだけど。

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(見てくださいこの顔!めちゃくちゃこえぇよ!!)

伏線が、すごいんですよね、この映画。ここまで伏線を張り巡らせている映画、久しぶりに観ましたわ。詳しくは書きませんが、登場人物の態度、表情、視線、言葉の細かなひとつひとつがちゃんと意味を持っています。事の真相を知ると、全てが違ってみえてくる快感。「あ、あぁ〜はいはいはい!!!」って感じ。これはほんとに久しぶり。

基本的には、黒人と白人をテーマにした作品だと思っていただいて構わないです。そのような観点でみると、細かなメタファーがたくさん観測できます。
例えば、綿とスプーンとか(作品のどっかにでてきます)。綿は、綿花栽培で酷使された黒人の歴史を表しています。一方スプーンは裕福な上流階級の象徴でしょう。俗に言う、born with a silver spoon in one’s mouthっていうやつです。
あと僕が気づいたのは、作品の中で印象的なスマホでの撮影場面。これは、白人警官による暴力がスマホのカメラで告発されたエリック・ガーナー窒息死事件を意識していると思われます(この事件に限らず最近は動画撮影で告発される同様の事件が多い)。
僕が気づいてないだけでたぶん他にもいろいろメタファーがあると思います。それを探してみるのもまた一興かも。

オチの衝撃度としては、そこそこといった感じ。ガツンとくる系ではなくて、ジワジワわかってくる感じ。欲をいえば、最後にもう一捻りどんでん返しがほしかった笑
あと、こういう作品こそ、メイキングがみたくなるね。ちなみに僕は『エクソシスト』の恐怖を、メイキングの皆がじゃれあっている映像をみて克服しました。

そしてそして。この映画、社会を風刺した作品なので、映画賞レースではコメディ映画として分類されることもあるそうですが、それに対して監督がひとこと。ドキュメンタリーだそうです。

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Twitterより。)

あー、ネタバレせずに書けた。「差別」に対する自分の思い込みを、最高の切れ味で裏切ってくる作品です。あとは、「娘さんを僕にください!」の最悪の結果バージョンです。気になる方はぜひご観賞を〜。

『ベイビー・ドライバー』("Baby Driver")

お久しぶりです。そぜです。最近はレポートより映画日記より、インターンのESを書いてます。
もう、「最近観たけどブログに書いてない映画」が10本超えちゃったよ。いつになるかわからんけど、気が向いたら書いていきます。

今回は『ベイビー・ドライバー』というちょっとマイナーな作品。
なんかあんまり話題になってないけどめちゃめちゃ面白いらしい、ということで。友達カップルにもオススメしたよ。
オープニングのカーチェイスは引き込まれたね。「つかみ」としては完璧。カーチェイスとしてのレベルもみせ方も素晴らしい上に、軽快な音楽にいちいち映像をあてはめてくるのね。これがもう気持ちよくて。当然マニュアル車なわけで、シフトレバーをカチッと動かす音とか、クラッチを踏む音とかもリズミカル。しまいには銃声まで音楽にあててきます。
オープニングクレジットにchoreographer(振付け師)が出てきた時は、ダンスのシーンでもあるのかと思ったけど、こういうことだったのかな。あれ、ダンスのシーンあったっけ。忘れちゃった。

主人公はベイビーっていう名前の天才ドライバー。まぁこの子がクセモノで。無口で感情をあまり表現しないような。身長高いしイケメンだからそれもカッコイイんだけど、冷静に考えて社会には適合できなさそうだよね。
一方でベイビーとくっつくことになるデボラは明るい女の子。びっくりしたのが、映画の性質上ベイビーと一緒に行動すると銃撃戦に巻き込まれたり死にかけたりするんだけど、足手まといにならずにちゃんと立ち向かうのね。偶然街中であった女の子にしては芯が強すぎません!?つって。ベイビーと合わせたらなんかボニー&クライドみたいになってた。
デボラを演じていたのはリリー・ジェームズという、最近ハリウッドでキテる女優さんで、これがまた可愛いんだ。実写版のシンデレラを演じていた人です。

f:id:oops_phew:20171026221827p:image(↑このシーン、Diorの広告のナタリー・ポートマンに似てると思ったらナタリーは車じゃなくてヘリだった…)f:id:oops_phew:20171026221927j:image

そんなベイビーとデボラ、幼少期にそれぞれの性格を決定づける大きな出来事がありそうな感じだったのに詳しい描写がなかったから、生い立ちとかみてみたくなった。

書くのが遅くなったけど、この映画の一番の特徴は、音楽。ベイビーが毎日ずーーーっとイヤホンで音楽を聴いていて、その音楽がそのまま映画のサウンドトラックになっています。僕のお気に入りは”Easy”。確かライオネル・リッチー(コモドアーズ)の曲。とても感傷的な場面で流れて、イントロだけで泣きそうになった。
あとは、”Never Never Gonna Give Ya Up”かな。これは今まで知らなかった曲なんだけど、一番耳に残った。

この作品、僕が大好きな俳優のうちのひとりであるケヴィン・スペイシーがでてたんだけど、今回はちょっとビミョーだったなぁ。もう歳とりすぎてる感が否めない。昔の方がよかった。オススメは、『ユージュアル・サスペクツ』、『L.A.コンフィデンシャル』、『セブン』とかです。芯のある謎の人物を演じさせたらピカイチ。

それにしても、何をするかわからんヤツがいるとひきこまれるな〜。アブない男がモテるわけだ。。。と、謎の分析を残して、今回はおわり。へへ。

『サーカス』("The Circus")

自他共に認めるほど相性の悪いバイト先の後輩と野外シネマの話をしていた時に、なぜか「一緒に行こう」ということになった。なんで野外シネマの話になったのか覚えてないし、ましてや何がどう転んで二人で一緒に行こうという流れになったのかも覚えてない。

恵比寿ガーデンプレイス。普段絶対行かないような場所に、一緒に出かけることはないと思っていた人と映画を観に行く。ある意味、奇跡のような映画体験。話しているととっても楽しい子だから別にいいんだけど、バイトをしていなかったら僕の人生に登場しなかったであろう種類の人間なので、まぁこれも一種の人生経験なんだろう。

もう、待ち合わせからしんどかった。
僕が駅集合にしたのとか、東口って指定してなかったのとかが悪いんだけど、恵比寿ガーデンプレイスっていわれたら普通東口にくるじゃん。なのに、あの子、西口から出ちゃって。もう、即電話。

「今どちらにいらっしゃいますか?」
「東口だけど。もしかして、違うとこからでちゃった?」
「はい、すみません…笑」
「んーとじゃあ今からそっち向かうから、そこから動かないで」
「え、もう動いちゃいました…!」
「(やばい、この子にじっとしてろというのは無茶な話だった…)」

みたいな感じで、これ以上ないくらい不器用な会話を、洗練された街エビスで繰り広げつつ。

「なにか目印とかあります?」
「俺いま恵比寿さんの像の前にいるよ!」
「え、恵比寿さんの像って、恵比寿駅に何体かいるんじゃなかったでしたっけ」
(ちなみに後日調べたところ、何体かいるのは事実なんだけど、他は駅の外にいるみたい。)

てな感じでその後も相性の悪さを存分に発揮しつつ。10分くらいかけてやっと会えました。はい。このまま会えずに映画が始まって終わって夜がふけるかと思った。

相性悪いエピソードは他にも途中で寄ったスタバでなんたらチーノにクリームをのっける派か否かが分かれたりといったのもあるけど、そこまでいくといよいよ映画に関係ないのでここらへんでやめときます。

今回観た映画は、チャップリンの『サーカス』。芝生の上で観るにはぴったりのコメディです。72分しかないので、おしりも適度な痛さ。
コメディに全振りの映画なので、おもしろかった!以外の感想はないんだけど、強いて言えば動物を使ったシーンがたくさんあったのにびっくりしたな。この奇跡的におもしろいシーンが撮れるまでに何度NGを出したことだろうって想像してしまって。完璧主義のチャップリンだから、つきあわされた動物も大変だったと思う。

f:id:oops_phew:20170914021411j:image(このシーンはえらいコトになってました)

チャップリンの作品は今まで『独裁者』、『街の灯』とかしか観たことなかったから、この機会にこういうテイストの作品が観られてよかった。彼の笑いのセンスは現代にもバッチリ通じていて、ホンモノなんだなって思いました。never gets oldってやつですね。会場は笑いに溢れていました。

あ、あと曲が意外とよかった。楽しげな雰囲気の中にどこか切なさも感じられてね。同じテーマが何回も繰り返されるから、楽しい記憶と共に、耳に残る。

それにしても、ツレがゲラゲラ爆笑していたのは隣にいて気持ちよかったな。なんだかんだあったけどこの子と一緒に観に来られてよかった、って思った。

f:id:oops_phew:20170914021513j:image(こんな感じでした〜)

 

 

『ハクソー・リッジ』("Hacksaw Ridge")

ちょっと前に観にいったから、もう半分くらい忘れちゃったんだけど。もう映画館ではやってないと思う。
やっぱさ、一応男だしさ、いっちばん最初に思うのが、「看護婦役の女優さんかわいいい!!」だよね。恋のシーンは王道の描写で、この人も完璧にその役割を演じてた。普段もこんな感じなのか気になっちゃう。こんな賢くて強い婚約者、憧れるわぁ。
知らなかったんで調べてみると、やっぱり有名な作品にはまだ出てないみたい。これからに注目の女優さんだと思います。

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あと、ひとりだけゴツいイケメンいるー!って思ったら、なんとサム・ワーシントンだったよ。あたしゃあんたとはアバター以来だよ。よっ、元気してた?最近どうよ?って感じで、僕の脳内では完全に「よっ友」なサム。この人も、今後の活躍に期待です。アバターの続編も控えてるしね。

のっけから美男美女の話に字数を割いてしまったので、真面目な感想を。真面目な映画だしね。
戦争の映画なので、一番注目されているのが戦闘シーンの激しさ、リアルさ。接近戦だから、けっこうえぐいわけ。僕もこんなに激しい戦争映画、初めて観たよ。頭がぶっ飛ぶのとかはまだいいとしてさ、下半身がもげてるのとか、火炎放射器で焼き殺してるのとか、結構グロかったっす。
母親と一緒に観に行ったんだけど、戦闘シーンが始まった途端に隣でめっちゃ泣き出しちゃって。あとでわけを聞いたら、人間がこんなバカなことをしていた事実があるということに情けなく、虚しくなったからだそうです。そんな泣き方もあるんだ。

主人公のドスという人は、簡単に言うと沖縄戦で衛生兵(medic)として活躍した人です。キリスト教を信仰していて、汝人を殺すなかれ(God says not to kill.)に従って兵として銃を持つことを断固拒否した人。良心的兵役拒否者っていうらしいです。そんなんあったの知らんかった。
いくら宗教上の理由だといっても、やっぱり周りからは臆病だと揶揄されてしまって、仲間の兵からわりと壮絶ないじめにあうわけ。アンドリューの線の細い感じがドス役に合ってた。
一番印象に残ったのは、ドスのことめっちゃバカにしてた強キャラが、いざ戦場に行くと”I’m scared! I’m scared!”ってしきりに言って怯えてたこと。その反面、ドスはめちゃ精力的に戦場を駆け回って、誰よりも勇敢だったという、皮肉。

あとは、そうだな、予告編でさ、砂の中に顔が埋まってて目だけ覗いてるみたいなシーンがあって、印象に残ってたんだけど、本編の中だと、予想した感じとは全然違う状況だった。絵的にもインパクト大。 

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この映画について考える時、どうしても『プライベート・ライアン』と比較してしまって。いろいろ似てるんだよね。これも接近戦の描写が激しい激しいって当時話題になったし。『プライベート・ライアン』って原題は”Saving Private Ryan”で、タイトルの通り「ライアン二等兵を救出する」話。舞台はノルマンディー上陸作戦。

これ、なんで何人もの犠牲を出してまでライアンを救出しに行かなきゃいけなかったんだと思う?みんな知ってる?

ゆるーく簡潔に説明すると、ノルマンディー上陸作戦の1年前、5人兄弟が同じ軍艦に乗ってたために一度に全員戦死したっていうアメリカ社会に衝撃を与えた事件があって、それをきっかけに兄弟は同じ部隊に入れないとか、1人は前線に出さないとか定めたきまりができたんだって。
その1年後に4人兄弟のうち3人が3日間で戦死するっていうことがあって、これは4人目(ライアン)を探し出して祖国に還さなきゃならんってことになって、救出部隊が送り込まれたってわけ。
こうやって考えると、戦時中だというのにものすごい冷静で合理的な判断がなされてるよね。日本だったらこんなこと、ありえなかったと思う。

ハクソー・リッジ』にも、絶対に銃に触れようとしないドスに、准将が戦地に行かせるGoサインを出す場面がある。結果的にドスはいなければならない存在になったし、戦場が崖の上だったからこそあんなに活躍できたのかもしれないけど、そういうことも含めて、准将は見抜いた上で許可を出したんじゃないかなって思って。ドスがめちゃくちゃ足手まといになる可能性だってあったわけじゃん。そう考えると、准将レベルの人が米軍での長年の経験、勘、合理的判断から下す決断の的確さっていうのに畏敬の念を抱かずにはいられなかった。

そんなこんなで映画史に名を刻むであろう『ハクソー・リッジ』。もうhacksaw(のこぎり)とridge(崖)っていう単語は忘れないね。あと、ハナクソリッジとか言ってるそこのキミ、違うからね。

あ、どうでもいいけど、帰りしなに新宿駅を通過したとき、工事のガガガガ…って音がマシンガンの連射音にしかきこえなかったよ。。。笑

『悪魔のいけにえ』("The Texas Chain Saw Massacre")

あぁ、二度と観たくねぇ。
すっげぇ面白いけど二度と観たくない映画ってあるじゃん。僕の場合だったら、『エスター』とか『オールド・ボーイ』とか。でもこういうのはほんとに面白いから、観たくないとかいいつつどうせ観直しちゃうんだけど、『悪魔のいけにえ』はたぶん一生観ない。それくらい、胸糞悪かった。観終わった後、放心状態になって、不快感と嫌悪感しか残らない。

なんでいきなりガチガチのホラーを観始めたかというと、
あたくし、実は、ホラーいける口なんです。
っていうのを言えるようになりたくて。(ほら、ちょっとカッコつけたいお年頃じゃん。)
多くの人が知ってるホラーの名作をチョイスしました。
いや、いけないわけではないんだけど、正統派のはあんま観ないからさ。食指がピクリとも動かないんだわ。

部活の合宿中、みんなが寝静まった後に一人で観たので必要以上にドキドキしながらあいほんの画面をみつめていたわけですが。レザーフェイス(この映画に出てくる有名な殺人鬼。チェーンソー持ってる。)が出てくるまでに30分くらいかかった。これがちょっと嫌だったな。そんなとこで焦らさんでええねんっつって。
テキサスの奥地に入ってった若者5人組が、ひとりずつレザーフェイスっていうやべぇやつ(とその家族)の餌食になっていく話なんだけどね。レザーフェイスが実質ひとりでおうちに住んでて、そこに何も知らない若者が探検がてら乗り込んでいくっていう。
レザーフェイスに襲われても周りにはだーれもいないのがわかっている絶望感。怪しげな家に差し込む夕日。悪趣味な内装。床いっぱいに転がる骨。これでもかってくらい不快なビジュアルを浴びせてくる。怖いっていうよりは、気持ち悪ぃ。 

f:id:oops_phew:20170807194540j:image(知らない人の家に勝手にあがりこんだら変なオッサンに殺されちゃうよっていう非常に教育的な一面もあります。)

この映画には、レザーフェイスがつけてる人の皮でつくった仮面とか、気の狂った家族の目も当てられないような気持ち悪い儀式とか、かなりキツめな描写がたくさん出てくるんだけど、やっぱり一番しんどかったのはレザーフェイスがチェーンソー持って森の中を追いかけてくるシーン。このチェイスはリアルで、本当に息が詰まった。(二度と観たくないので絶対に絶対に確認しないけど、)音楽とかなかったんじゃないかな?チェーンソーのウィ〜ンっていう音と、全力疾走で逃げる女の子のエンドレスな悲鳴しか聞こえなかったと思う。本当に怖いから、悲鳴もわざとらしいとかしつこいとか感じなかったな。

f:id:oops_phew:20170807194557j:image(シンプルに怖いです。)

ホラー映画だから、お約束通りちゃんと女の子がひどい目にあうんだけど、これが本当に悪夢としかいえないような地獄で、もし自分がこの主人公だったら絶対耐えられないし発狂してると思った。怖い映画たくさん観てきたけど、これ以上の恐怖体験ってないんじゃない?なにより、奥地だからこの気狂い家族以外の人が周りにいないっていうのが文字通り絶望でしかない。

f:id:oops_phew:20170807194612p:image(この子もわりと気が狂う寸前だったけど。演技とは思えない迫真の表情。)

レザーフェイスって、この一作だけじゃよくわからないキャラクター。こういう映画を観ていると、この殺人鬼はどうしてこんな人になってしまったんだろうって、生い立ちが知りたくなる。だって、生まれた時は僕たちと同じで純粋な赤ちゃんだったわけじゃん。たぶん。

レザーフェイスは映画の中では特に説明はされずに、ただ「得体の知れないやべぇ奴」みたいに描かれてるけど、よくみると特徴がちょっとわかる。例えば女装癖はあるだろうし、幼い頃からずっと親父に虐げられながら育ってきたんだろうなっていうのも推測できる。そして、焦るシーンとか、ラストのチェーンソー振り回して悔しがるシーン、全編を通じた行動の計画性のなさなんかをみてると、精神年齢が相当低そうっていうのもわかる。

多分、エド・ゲインっていう実在の殺人鬼をモデルにしているような気がする。後続の作品を観たら、レザーフェイスについて詳しくわかるのかな。興味あるけど、あんま観たくないな。

他のホラー映画とは明らかに異なる圧倒的リアルさがこの後味の悪さを演出しているんでしょう。

あぁ、それにしても、二度と観たくない映画に久しぶりに出会った。ガツンとやられたい人はどうぞ。